2月、モスクワ

つづきの話。

私が今までの人生でいちばん必死に、文字通り必死に歩いたのは2月のモスクワで遭難したとき。
バスもタクシーも見つからず、ここがどこかも分からず、商店もひとつもなく、果てしなく長い道路を高速で走り去る車を見送り続けながら、ひとまず右か左 どちらか決めて、歩きだすしかなかった。
正誤なんて目的なんて意味なんて
ぜんぶ真っ白で、私は自分の身体の中に熱が、生命があることを知った。