雪を払いはね上がる枝


夏に逝去した祖父の遺体は半日で腐乱を始めた。
葬儀屋が急遽お棺に詰め込んだドライアイスも、古びた畳と腐乱臭との親和性を断ち切ることはできなかった。
私がこの季節と死とを結びつけてしまうのは、この記憶のせいではない。
有機物が腐敗する暑さと湿気。
渋谷の道端に横たわる大きな鼠の遺骸を見るたび、駐車場に列を連ね光を跳ね返す自動車の大群を見るたび、私自身が死んでゆくのを感じる。
私が生命の熱を感じるのは冬。